中国はデフレの瀬戸際にある。追加の景気刺激策が必要だとウォール街のエコノミストは訴えているが、中国政府がすぐにも思い切った措置を講じることはなさそうだ。
西側諸国の多くがここ数年インフレと闘い続けている一方、中国では反対にデフレ圧力が高まっている。8月の中国消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.6%上昇したが、これは異常気象の影響を受けた食品価格が主因だった。食品とエネルギーを除くコアCPIは0.3%上昇にとどまった。類似の物価指標にGDPデフレーターがある。これは名目国内総生産(GDP)と実質GDPの差を示し、幅広い物価動向を反映する。GDPデフレーターでみた中国経済は、すでに5四半期連続でデフレに陥っている。
住宅市場の低迷が中国経済全体に重くのしかかっている。不動産開発や素材などの関連部門は投資を抑制。長らく不動産が主な資産形成手段だった家計は、財布のひもを締めている。個人消費の減少が物価を押し下げており、これが企業収益を圧迫して賃金低下を招く。こうした悪循環に陥れば、デフレが長引くリスクがある。モルガン・スタンレーのアナリストは最近のメモで、デフレは今や中国にとって「社会の敵ナンバーワン」とまで言い切った。