エリートやインテリが掲げる「多様性」は大衆にはもう届かない。じゃあ、どうするべきか。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

エリートやインテリが掲げる「多様性」は大衆にはもう届かない。じゃあ、どうする?Photo: Adobe Stock

エリートへの不信感

 人は、信じたいものを信じます。

 実際に、エセ科学やスピリチュアルを信じる人たちは、増え続けています

 こうした状況は現在の社会でも進行中です。
 二極化によって生じた経済格差が固定化され、富裕層と貧困層の隔たりがさらに広がっています

 裕福で社会的に余裕のある人々にとっては、こうした現象は「理解し難い行動」にしか映りません。

 しかし、実際には、困窮している人々の数は増加し、彼らの中では論理やエビデンスではなく、感情に訴える言葉に頼る傾向が強まります。

 しかし、裕福な人々はその状況に気づくことが難しい

 なぜなら、彼らは同じような富裕層・エリート・インテリとしか交流がなく、困窮している人々の現実や日常を知る機会が少ないからです。

エリートの声は届かない

 また、富裕層・エリート・インテリが掲げる「多様性」「機会の平等」「包摂」といった理念も、経済的に苦しい状況にある人々には共感されにくくなっています。

 むしろ、これらの理念は彼らからすれば、「金持ちの戯言」「現実感のない理想論」として映り、理解されるどころか、反感を買う原因にもなりかねません。

 生活に余裕がなく、目の前の生存が脅かされている人々にとっては、こうした理念よりも具体的な「救済」や「支援」を優先してほしいからです

 このように、価値観のズレや隔たりが生まれ、富裕層・エリート・インテリの掲げる理想が困窮する人々には届かず、むしろ対立を深める結果につながっています。

 アメリカの大統領選でも、こうした分断が顕著で、互いの支持層がまったく噛み合わない論争を続けているのは、まさにこの構造が背景にあるのです。

「エビデンス」では人は動かない

 二極化の世界が誕生し、追い詰められている人々が増加している。

 そうなっている以上、これからの時代には、エビデンスや合理性だけで人々を説得することがますます困難になると考えられます

 私たちは、これからは「正論」や「エビデンス」を振りかざすだけでは通用しない世界に入っていることを深く理解しておかなければなりません。

 分断が進む中で、さまざまな立場の人々がそれぞれに異なる「正しさ」を持ち、それを信じて行動する時代になっています

 人々が信じる「正しさ」がバラバラに分断され、複数の真実が存在するということを前提に、他者を理解して共存する方法を模索しなければならない時代なのです。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。