「採用担当者の人が、内定を辞退されるような対応をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さんだ。
「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」……こうした、多くの採用担当者、経営者たちから寄せられる悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』である。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を鮮やかに構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊だ。
この記事では、本書の内容を元にしながら「採用活動を成功させるためにやるべきこと、やってはいけないこと」を北野さんに語ってもらった。(構成/ダイヤモンド社・田中怜子)

3000社以上の採用支援をしたプロが教える「内定を辞退されてしまう会社」の担当者がやっている痛恨のミスPhoto: Adobe Stock

採用がうまくいっている「1割の企業」がやっていることとは何か?

 私はワンキャリアという就職・転職サイトを運営する企業の取締役として、多くの会社の経営者、採用担当の方と話す機会があります。現場で話を聞くとヒシヒシと感じることですが、今の日本はとにかく人手不足です。人を一人採用する難易度が、ものすごく上がっている。地方の中小企業の方々からはこのままでは事業やサービスが続けられない、という切迫した状況を本当によく聞きます。

 特にここ数年で採用が難しくなった根本的な原因は、シンプルに言ってしまえば外部環境、つまり「人口減少」です。
 外部環境の変化によって、これまで「なんとなく」「属人的に」実施されてきた採用という仕事の難易度が、一気に上がりました。

 厳しい言い方をすれば、「うちの会社にはいい人が来ない」と悩んでいる9割の会社と、採用活動がうまくいっている1割の会社との2極化が進んだんです。

 9割の企業の方々からは
「うちの会社は有名企業じゃないから、採用は難しいです…」
「中小企業が大企業に勝てるわけがないですよ…」
「毎日忙しく頑張っているのに、採用人数の目標が全く達成できないです…」
という嘆きの声をよく聞きます。私自身、スタートアップ企業で採用を担当していた身として、その気持ちはよく分かります。

 確かにこうした外部環境を、一人の経営者、採用担当者が変えることは不可能です。しかし、企業側ができることはないかというと、全くそんなことはありません。

 こうした状況の中で、「うちの会社にはいい人が来ない」と悩んでいる9割の会社がやっていることと、採用活動がうまくいっている1割の会社との違いは何か? この問いを、ずっと考えてきました。その集大成としてシンプルで覚えやすい「行動指針」に落とし込んだのが、本書で紹介している「採用の9か条」です。

第1条 タイミングを制する者が採用を制する
第2条 いい人材は固まる。コミュニティをおさえるべし
第3条 新卒採用は、デザイン、オフィス、演出、採用サイトに投資せよ
第4条 求職者理解の徹底を怠るな。ここからジャイアントキリングが生まれる
第5条 企業イメージへの投資を怠るな。特に大量採用の成否はイメージが決める
第6条 初任給、平均年収、ボーナス、家賃補助について人は話したがる。自社を知ってもらうための武器として使え
第7条 人材輩出企業のイメージを一度でも獲得すれば、人々はそれを一生忘れず他人に語る
第8条 徹底的に人間関係を見せよ。社員と社員、上司と部下、自社と他社の関係性こそが、最強のコンテンツになる
第9条 トップの人材は、トップの人材にしか口説けない

最も大事なことは「タイミング」

 この9か条はどれも重要ですが、私がまず知ってもらいたいと思っているのが、第1条の「タイミングの法則」です。

 自分に置き換えてみれば誰でもわかることですが、就職や転職は、タイミングが本当に大事です。どんなに魅力的なオファーでも、候補者にとって「今じゃない」というタイミングであれば決まらないですし、反対にタイミングさえ良ければ、いわゆる「ジャイアントキリング」、弱者が勝つことが可能になるからです。

 もちろん、採用する側が「候補者のタイミング」をコントロールすることはできません。だからこそ、「この人に入社して欲しい」と思ったら、何度でも、懲りずに連絡を取り続け、追いかけ続ける必要があります。

 しつこくするっていう意味じゃないですよ(笑)。タイミングが来るのを待つために、連絡を取り続け、関係を切らないようにするんです。

メールの返信が3日後になったら選ばれない

 反対に、最も「採用のタイミングを逃してしまう」行動って何だと思いますか? よく「えっ、そんなこと?」と驚かれるんですが、最もやってはいけないNG行動は、「メールの返信が遅いこと」です。

 採用担当者の人は
「どんなホームページを作るか」
「どんな会社説明会をするか」
「面接で何をするか」
……こうしたことにはすごく気を使うのに、「面接の後のメール返信を3日後にする」とい最悪のNG行動を、平気でしてしまうんです。

 よくあるのが、新卒採用の内定後の「オファー面談」の日程調整が遅いので、どんどん熱が冷めていくパターン。内定辞退をされてしまう会社は、ここで時間がかかっている場合がよくありますね。

 候補者から質問が来たのに、それになかなか答えないのもダメですね。採用担当者からすると「自分だけでは答えられないから確認しよう」と考えていたとしても、相手からすれば単に遅いだけですから。

 逆に、他は全部ダメダメでも候補者への「メール即レス」をとにかく徹底するだけで、いい人を採用できる確率は、確実に上がると思います。返信が早いだけで、誰もがその会社に対して安心感、信頼感を持ってくれるので、これほど簡単なことはありません。

 メール対応を制する者は採用を制する。このことは、必ず覚えておいてください。

(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』を元にした語り下ろしです)。

北野 唯我(きたの ゆいが)
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。