逸美さんは友樹さんが浮気していたことと、依頼した探偵がストーカー化していることを友達に相談しました。そして、相談された友達が知り合いの知り合いに探偵の私がいることを思い出したとのことで、私の元へ連絡が来たのです。

 調査の相談ではなかったのですが、なにか力になれればと、逸美さんからこれまでの状況を聞くために電話をしました。

探偵として
常軌を逸している行動

 逸美さん「松原さんの調査結果やアドバイスにはとても感謝しています。でも、怖くなってきたんです。実は自宅だけではなく、たまたま調査現場が近くだったのでと、私が勤めている旅行会社の窓口にまで来たんです」

 これは探偵として常軌を逸していると思い、「何度か来たんですか?」と尋ねました。

 逸美さん「実は、3回ほど来たんです。3回目は私の誕生日に花束を持って来たんです。電話相談の合間にお互いの誕生日の話をしたことを、覚えてらしたんですね。会社の同僚にも見られていて、私自身が浮気していると会社で思われそうでとても困りました。会社では家庭の話はしていなくて、同僚に夫の浮気調査をしている探偵ですと説明することもできません。知り合いだとごまかしましたが、信じてくれてはいないと思います」

 私は間違いなくストーカー行為に発展していると思いました。探偵仲間が依頼者と結ばれたという話は聞いたことがありますが、ストーカー化した話は聞いたことがありませんでした。

「夫が知れば離婚するにも浮気を疑われて不利になりそうですし、会社に行きづらくなって仕事を失ってしまうかもしれないと思うと、不安で不安でどうにかなってしまいそうです。探偵会社に苦情を入れようかと思ったのですが、まだお世話になるかもしれませんし、松原さんが逆上して何をするかもわかりません」(逸美さん)

 逸美さんの顔は見えませんが、言葉の様子からかなり憔悴(しょうすい)している様子が伝わってきました。