歩くのが遅くなった、寝ても疲れが取れない、根気強くひとつのことを考えられない、よく目が霞む……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。

「早く・苦しまず・安く」逝く人と、「長く・苦しく・高く」逝く人の決定的な違いPhoto: Adobe Stock

ライフスタイルさえうまく選べば
健康のまま長生きすることは可能

 長く生きるということは、実際どのようなことを意味するのだろうか? その答えは、尋ねる相手によって異なるだろう。私たちの多くは、祖父母や両親が年をとって病気になる姿を目にする。そして病気の数と同じぐらい多くの薬に支えられながら医者や病院への行き来を繰り返し、長く、遅く、苦しい死を迎える姿を目にすることも少なくない

 もしあなたも、ゆっくりと忍び寄る衰えと、加齢に伴う慢性疾患の猛威を目の当たりにしている世界の大半の人々の1人なら、長生きすることには、まったく魅力を感じないだろう。

 だが、ブルーゾーン[地球上最も健康で長寿の人々が住んでいる場所]のコミュニティに住む人に尋ねたとしたら、長生きの暮らしは他のライフステージのものとほとんど変わらず、人生経験が少し増えただけだ、と答えるにちがいない。

 実際、1980年に『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』[マサチューセッツ内科外科学会雑誌、世界5大医学雑誌の1つ]にドクター・ジェイムズ・フリースが発表した画期的な研究論文「老化、自然死、病的状態の圧縮」(*1)では、理想的な体重を維持し、喫煙せず、定期的に運動すれば、健康で活発な状態で長生きすることができると明言されている

 この研究では、そのような人たちは、ついに死を迎えたとき、早く、苦しまず、安く逝くことができていたが、過体重で、喫煙し、運動不足の人たちは、長く、苦しく、高くつく死に方をしていた

 健康だったグループの人たちは、無病息災の年数、つまり健康寿命(健康でいられた年数)と寿命(生きた年数)を劇的に延ばした一方で、不健康なグループの人たちは、さまざまな病気や機能不全を抱えた状態で何十年も過ごすことが多く、その結果、生活の質が劇的に低下し、本人や家族のみならず、医療制度にも負担をかけていた。

 悲しいことに、有害な食生活とひどいライフスタイルのせいで、アメリカ人の平均寿命は2015年以来短縮傾向にある。新型コロナウイルス感染症の蔓延期には、慢性疾患を最も多く抱えるグループの人々、つまり黒人、ラテン系、アメリカ先住民の人々の平均寿命はさらに3年縮んだ。

 世界保健機関(WHO)は、平均的な人は人生の最後の20%を不健康な状態で過ごすと推定している。これは平均すると、およそ16年だ。もしあなたが76歳まで生きるとしたら、60歳から死への行進を始めることになるのである!

 このデータは、ライフスタイルを上手に選べば、健康で長生きすることが可能で、最期の時が来たら、すぐに逝けるということを今でも証明し続けている(*2)。言い換えれば、健康寿命が寿命と同じになるわけだ。

 そしてこれは、タバコを吸わない、理想的な体重を維持する、運動する、という3つのシンプルなライフスタイルを適用するだけで達成できるもので、本書『医者が教える最強の不老術』でこれから取り上げる、健康と活力を飛躍的に向上させる先端的な手段を使わなくても可能になるのだ。

 誰だって苦しみたくはない。そして、病気や障害を抱えた状態で100歳を超えて生きたいと思う人もいない。グッドニュースは、本書で紹介する原則を今から取り入れれば、そうならなくてすむことだ。10歳だろうと100歳だろうと、本書の原則は有効だ! 遅すぎるということはない。

 事実、『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』[米国医師会雑誌、世界5大医学雑誌の1つ]に掲載されたある研究では、70歳の実験参加者たちが地中海式食事法とウォーキングを始めたところ、早死にのリスクが65%も減ったという結果が得られている!(*3)

 世間では、高齢者が増えると社会に負担がかかると考えられている。だが、高齢者が健康であれば、その逆こそ真なりだ。高齢者には、社会全体の社会的・経済的幸福を向上させる知恵、知識、技能がある。それに、社会にさらなる負担をかけることもない。

参考文献
1. Fries JF. “Aging, Natural Death, and the Compression of Morbidity.” N Engl J Med. 1980 Jul 17;303(3):130-35.
2. Hubert HB, Bloch DA, Oehlert JW, Fries JF. “Lifestyle Habits and Compression of Morbidity.” J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2002 Jun;57(6):M347-51.
3. Knoops KT, et al. “Mediterranean Diet, Lifestyle Factors, and 10-Year Mortality in Elderly European Men and Women: The HALE Project.” JAMA. 2004 Sep 22;292(12):1433-39.

(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)