歩くのが遅くなった、寝ても疲れが取れない、根気強くひとつのことを考えられない、よく目が霞む……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。
人生の目的がある人は、ない人よりも7年長生きする
ブルーゾーン[地球上最も健康で長寿の人々が住んでいる場所]のようなところに暮らす人々は、コミュニティにおける自分の居場所と目的を理解しているように見受けられる。そこには意義と目的の感覚が埋め込まれており、それが彼らの人生を導いている。
この混沌として、慌ただしく、しばしば断絶された世界に暮らす私たちの多くは、なかなか自分の道が見つけられない。だが、それを見つけることは健康の達成に不可欠の要素だ。
国立老化研究所の初代所長であるドクター・ロバート・バトラーは、目的意識を持つことと平均余命との関係を調査した。その結果発見したのは、明確な目的意識、つまり朝起きる理由を持っている人は、明確な目的を持っていない人より7年も長生きするということだった。
『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』誌に掲載された成人7000人を対象とした別の研究では、人生の目的スコアが最も低い人は、スコアが最も高い人に比べて死亡の確率が2倍高かった(*1)。
自分の目的を見つけるにはどうしたらいいのだろう?『ときどき思い出したい大事なこと』[枝廣淳子訳、サンマーク出版、1998年刊]の著者であるディック・ライダー氏は、みずからの目的、すなわち「なぜ」を特定するために役立つ枠組みを提供している。
ライダー氏は、自分の才能と情熱と価値観を足したものが、自分の目的になると言う。深く掘り下げて自分の好きなものを見つけ、その道に進もう。それは1人1人異なるものの、長寿のためには、よく食べ、運動することと同じくらい重要だ。定年退職後に死亡リスクが高まるのは偶然ではない。そしてそれは、暦年的に年を重ねるからだけではないのだ。
利他主義の科学は、自分より偉大なものの一部となり、他者を助け、奉仕することが、意義と幸せに至る最強の道の1つであることを示している。
2010年のハイチ地震の直後、ポルトープランスの主要病院で負傷者のために1日20時間働き、ほとんど食事もとれず、見たこともないような最悪のトラウマと死と喪失に直面したとき、私は他者に奉仕できること、つまり、自分のことにこだわるのではなく、何か意義あることに携われることをありがたく思ったことを覚えている。
食生活、運動、睡眠の改善、ストレスを管理し神経系を休める方法を学ぶこと、有意義な人間関係とコミュニティを構築すること、人生に目的と意義を見出すことは、健康と長寿の土台だ。そしてどれもみな、日々の暮らしにほとんど、あるいはまったく余分なコストをかけずに誰でも実践することができる。
これらの習慣を毎日の暮らしに取り入れるだけで、健康は大きく向上し、寿命も延びる。
*1 Alimujiang A, Wiensch A, Boss J, et al. “Association Between Life Purpose and Mortality among US Adults Older Than 50 Years.” JAMA Netw Open. 2019;2(5):e194270.
(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)