「小さな仕事」で手に入れた
定年後の「豊かな暮らし」

 もっとも、私がそう感じたとしても、面接官に面と向かって「この面接って、本気で採るためのものじゃないですよね?」と聞くわけにもいかず、案の定あっけなく終わってしまった面接に、「ま、書類審査をパスしてここ(面接)までたどり着いただけでも、歳を考えればまだマシか……」と、自虐的に思いながらも、やはり密かに次のチャンスを期待している惨めな自分がいる、それの繰り返しとなります。

 そのように扱われることが続くと、やはり「面接確約」で、しかも採用される可能性が高そうな「小さな仕事」が、ことのほか魅力的に思い始める気持ちも、私にもよく分かります。

 ことほど左様に、「定年」してしまった後の「高齢者の仕事探し」とは、まさに「黄昏(たそがれ)る」ものです。

 ちなみに、定年後にそんな「小さな仕事」を通じて、「豊かな暮らし」を手に入れたケースが紹介された、ある書籍があります。

『ほんとうの定年後――「小さな仕事」が日本社会を救う』(坂本貴志著・講談社現代新書)という題名の本の中で、著者の坂本さんは次のように述べられています。

 各種施設で活躍されている警備員・管理人には高齢の方が多い。駅前の車両の管理、公共施設の整備といった仕事についても、日頃意識している人は少ないだろうが、こうした仕事が私たちの日々の生活を陰ながら支えている。