目標は、達成された。通ってきた道が険しかっただけに、込み上げてくる達成感も圧倒的だった。ふわふわとした気持ち、夢見心地に全身を委ねてしまいたい衝動は、もちろん、田中にもあった。

 だが、視界の片隅で捉えていた残像が、それを許さなかった。

「うわ、終わった!」田中史朗がラグビー日本代表として名を呼ばれる直前の「一瞬の間」、そのワケに涙腺崩壊した!『田中史朗 こぼした涙の物語』(金子達仁、宝島社)

「ぼくがジェイミーのチームで見てきた地獄は、メンバー全員が潜り抜けてきた地獄だったと思うんです。ぼくはジャージを着られるけど、着られへん人間もいる。そういう選手たちが流してる涙を見てしまったら、残った人間は彼らの分までやらなあかん。その人の分まで、結果を残して、ああ、やっぱ強いチームだったんやなって思ってもらわなあかん」

 入ること、だった目標は、浅い眠りが明けた翌日には、完全に切り替わっていた。

 選ばれた以上は、やるしかない。

 もう、勝つしかない。