その可能性が、決して高くなかったことも知っている。
だが、田中の名前はそこにあった。込み上げる熱いものを感じつつ、しかし、マネージャーという立場上、間違っても感情を露(あらわ)にすることはできない。田中が入ったということは、他の誰かが外れたことを意味する。
それが、一瞬生まれた「間」の正体だった。
自分の名前が読み上げられた瞬間、田中の中で張りつめていた緊張の糸が、プツリと切れた。懸命に抑え続けてきたものが、こらえきれずに溢れだす。ただ、歪む視界の中には、メンバーから外れた男たちの姿も映っていた。
自分だけの感傷に浸っているわけにはいかなかった。
「みんな、やっぱり泣いてるんですよ。それ見たら、もうたまらなくなってしまって。布巻(峻介)、梶村(祐介)、堀越(康介)……みんな泣いてる。ぼくは……もちろん嬉しいんですけど、外れてしまった選手の気持ちも痛いほど、ホンマに痛いほどわかる。わかるだけに、どんな風に声をかけたらいいかがわからない。たぶん、リーチ(マイケル)はなんか声かけてたのかな。ぼくは結局、なにもできずに自分の部屋に帰りました」