部屋に戻った田中は、すぐに妻に電話をかけた。
「選ばれたよーって言ったら、泣いて喜んでくれました。頑張ってよかったねーって」
電話を終えると、茂野と流、選ばれた2人のスクラムハーフが部屋にやってきた。一緒に頑張りましょう――そういって差し出された手を、田中は涙ながらに握り返した。
「入ること」だった目標が
「勝つこと」に変わった
「たぶん、ワールドカップで試合に出るのはこの2人やろうから、自分にできる限りのサポートをしていこう、とは思いました。選ばれたのはめっちゃ嬉しい。でも、この時点では、試合に出られる自分っていうのが、まだ想像できてないんですよ。ちょっと失礼な言い方になってしまいますけど、15年の時の廣瀬(俊朗)さん的な立場なんやろな、試合には出られへんけど、チームを支えていくみたいなのを期待されてるんやろなと思ってました」
なかば諦めていた3度目のワールドカップの最終メンバーに、田中史朗は選ばれた。彼にとって、19年のワールドカップにおける目標は、勝つこと、ではなく、入ること、だった。