松田と松島に肩を抱かれ
号泣する田中
16時45分、田中と太田GMの写真撮影が終わった。太田GMが壇上を降り、数分後、田中もそれに続こうとしたときだった。
屏風（びょうぶ）の裏から、松田と松島が現れた。
田中はあっけに取られた。
『田中史朗 こぼした涙の物語』（金子達仁、宝島社）
「いや、家族と柴田さん以外には言ってなかったですし、チームにも午前中に初めて伝えたぐらいやったんで、なんでお前らがここにいるん？っていうか、正直、ちょっとワケわからんようになってたっていうのが本当です」
地獄の網走合宿で疲労困憊の田中をいじり続けた若い2人は、満面の笑みとともに花束と、松島がネットで購入したというサントリーのウィスキー『山崎』を手渡してきた。一瞬のどよめきのあと、凄まじい量のフラッシュが焚かれた。
予想通りの田中のリアクションと、これまた予想通りの報道陣の反応に、柴田は胸をなでおろした。
その日の夜、多くのテレビ局が新宿ヒルトンでの映像を流した。使われた映像の多くは、淡々と質問に答えた記者会見ではなく、笑顔の2人に肩を抱かれて号泣する田中の姿だった。
