根気強くひとつのことを考えられない、寝ても疲れが取れない、よく目が霞む、歩くのが遅くなった……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。

【医者の不老術】筋肉を作るのに最適な栄養10選Photo: Adobe Stock

質の悪い部品から出来ている身体は
機能の劣った身体になる

 新しい細胞、臓器、組織、皮膚、筋肉、骨、脳細胞などは、何もないところから突然生まれるわけではない。それらの原材料は食べ物だ。身体の構造が、どれだけ丈夫で、どれだけよく機能するかは、私たちが口に入れるタンパク質、脂肪、ミネラルなどの構成要素にかかっている。

 炭水化物は必須栄養素ではないと聞くと驚かれるかもしれない。にもかかわらず、私たちが実践している欧米型の加工食品に満ちた食生活の50~60%は炭水化物が占め、それらの大部分は低品質の精製デンプンや糖からなる。

 炭水化物が私たちの構造にとって必須でないというなら、それらはどこに行くのだろう? 一部は燃焼されるが、大部分は危険な病気の原因となる内臓脂肪となり、老化の典型的特徴を引き起こす。

 質の悪い部品からできている身体は、機能の劣った身体になる。筋肉の減少と骨の減少は、老化や加齢に伴う病気の大きな要因だ。筋肉は代謝が行われる場所であり、筋肉量の低下は代謝の低下、さらにはもっと悪いことを引き起こす。脂肪がサシのように入った質の悪い筋肉は、糖尿病、炎症、そして老化を招くのだ。

 身体は、重要な分子のほとんどをタンパク質から作っている。だが、すべてのタンパク質が同じというわけではない。筋肉を作るのに最適なタンパク質は、ほかの筋肉、つまり動物性タンパク質だ。

 確かに、タンパク質は多くの植物性食品にも含まれているが、その質は同じではなく、身体が新しい筋肉を作るために必要な必須アミノ酸、特にロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、含硫アミノ酸などの分岐鎖アミノ酸(BCAA)の含有量は、動物性タンパク質に含まれている量より少ない(*1)。

 また、豆類やナッツ類などの植物性タンパク質には、タンパク質の吸収を悪くするフィチン酸塩などの化合物が含まれている(ただし、豆やナッツ類を避けるべきだという意味ではなく、適切なバランスが必要だということだ)。

 ヴィーガンの人は、とりわけ年齢を重ねるにつれて、タンパク質が豊富な植物性食品の量を増やしたり、プロテインパウダーを加えたり、BCAAをサプリメントで補ったりして、分岐鎖アミノ酸を確実に摂取する必要がある(*2)。

 そして、ビタミンD、ビタミンK、カルシウム、マグネシウム、ホウ素などの、組織、筋肉、骨を作るのに必要なビタミンやミネラルを摂ることも忘れないようにしよう。

参考文献
*1 Berrazaga I, Micard V, Gueugneau M, Walrand S. “The Role of the Anabolic Properties of Plant- versus Animal-Based Protein Sources in Supporting Muscle Mass Maintenance: A Critical Review.” Nutrients. 2019 Aug;11(8):1825.
*2 Van Vliet S, Burd NA, van Loon LJ. “The Skeletal Muscle Anabolic Response to Plant- versus Animal-Based Protein Consumption.” J Nutr. 2015 Sep;145(9):1981-91.

(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)