歩くのが遅くなった、寝ても疲れが取れない、根気強くひとつのことを考えられない、よく目が霞む……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。

運動せずとも身体能力が向上した「夢のサプリ」とは?Photo: Adobe Stock

「ウロニチンA」を接種しただけで
運動していないのに筋力が増えた

 有望な「長寿分子」であるウロリチンAは、ある種の腸内細菌(現代人では枯渇していることが多い)が、ザクロ、ベリー類、クルミに含まれるファイトケミカル(植物性化学物質)にさらされたときに作られる。

 残念なことに、現代のマイクロバイオーム[ヒトの体に共生する微生物の集団全体]は、ザクロの代謝化合物であるウロリチンAが生成できない。この分子は腸内細菌によって産生されたあとに体内に吸収されることになるため、ポストバイオティクスと呼ばれている。

 ウロリチンAは、老化の2大特徴であるミトコンドリアの機能と数の低下、および炎症の改善に効果がある。その理由は、マイトファジー(古いミトコンドリアの一掃)を誘発するとともに、より多くのミトコンドリアの産生を促すからだ。また、C反応性タンパク質のレベルが低下することも測定されており、全身の炎症も軽減させるものと思われる。

 中年太りの成人を対象とした最近の無作為化比較試験で、ウロリチンAは、運動を詰め込んだ錠剤のように働くことがわかった。ウロリチンAのサプリメントを4ヵ月間摂取した参加者では、まったく運動しなかったにもかかわらず、脚の筋力が12%、最大酸素摂取量(VO2max、有酸素性体力の指標)が10%増えただけでなく、歩行距離や筋力などの身体能力指標も向上していたのだ(*1)。

 サルコペニアは老化の重大な要因であるため、年齢が進むにつれてそれを逆行させ、筋肉の機能を向上させることができるサプリメントの発見は重要だ。

参考文献
*1 Singh A, D’Amico D, Andreux PA, et al. “Urolithin A Improves Muscle Strength, Exercise Performance, and Biomarkers of Mitochondrial Health in a Randomized Trial in Middle-Aged Adults.” Cell Rep Med. 2022 May 17;3(5):100633.

(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)