体を丸める少女写真はイメージです Photo:PIXTA

「40年間、一度も働いたことがなかった」という中年無職女性が綴る、幼少期の辛い日々。どこにでもいる少女だった彼女の人生が“暗転”したのは引越し、いじめ、潔癖症、そして“父の水虫”が原因だった――。強迫性障害を患っていた著者が、少女時代の壮絶なエピソードを赤裸々に記す。本稿は、難波ふみ『気がつけば40年間無職だった。』(古書みつけ)の一部を抜粋・編集したものです。

いじめ、不登校、潔癖症……
人生を暗転させた「引越し」

 ちっぽけな私の人生が最初に“暗転”したのは、小学校1年生の中期くらいのことだった。生まれ育った愛着のある川崎市から、父の仕事の関係で千葉県の市原市という長閑な場所へ引っ越すことになったのだ。臆病ながらも友だちができて、楽しく学校生活を送っていた私にとって、それはとても大きな出来事だった。

 川崎にいた頃は、4階建ての、エレベーターもついていないような古くて小さなマンションに住んでいたのだが、母方の叔父と叔母も別の階に住んでいて、よく可愛がってもらっていた。引っ越し当日、ふたりに見送ってもらいながら、私は涙でグチャグチャの顔をしていたと思う。別れの辛さを味わったのは、このときが初めてだったかもしれない。

 そして、引っ越し先に向かう車窓から、生まれて初めて田んぼを見たときの、あの「遠いところに来てしまった……」という寂しい感覚は今でも忘れられない。

 恥ずかしがり屋の内弁慶な性格だった私は、その環境の大きな変化に案の定、うまく対応できなかった。