「自分の仕事に足りないことを全部言語化してくれる本」「会社員人生が180度、変わった」
そんな感想が届いているのが、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』シリーズ三部作だ。これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」をもとに、ビジネスの現場で「一生活躍し続けられる」メソッドや思考法を授ける本シリーズは、さまざまな業界から圧倒的な支持を集めている。
今回は、全ビジネスパーソンに必須の「意思決定」のあり方を指南する、シリーズ最新刊『パーフェクトな意思決定 「決める瞬間」の思考法』の中から、特別に本書のエッセンスを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「意思決定」をしよう
あなたは、自分で決めることができるでしょうか。
仕事ができる人や出世する人は、「意思決定」をすることができます。
逆に、仕事ができない人は、「検討」という言葉ばかりを使います。
「検討します」という言葉に逃げず、ちゃんと「意思決定」について学んでおきましょう。
検討によって、見えないコストが生じている状態は、避けなければいけません。
そこに目を向けるのが、「パーフェクトな意思決定」のために求められることです。
1 動いて成功した
2 動いて失敗した
3 何もせずに現状維持をした
この場合、「1」が素晴らしいことは当然です。
問題は、「2」と「3」ですね。
おそらく、「2」のほうが悪く目立ちます。
「3」は意識しないと見えない領域です。
ただ、それでも「2」のほうを評価すべきです。
それによって、次の改善策を考えるのも、もちろんセットです。
あるいは、主体的に「3」を選ぶのなら、それはそれでいい。
「それはやりません」と、ハッキリ断ることも、もちろん意思決定の一つです。
ただ、最悪なのが、その意思を示さないまま、なんとなくうやむやにして結果的に「3」を選んでしまっているときです。
そういう状況はつくらないようにしましょう。
意思決定が「ブレる瞬間」
ここで少しシミュレーションです。
あなたの会社では、「X」という商品を扱っているとしましょう。
そして、いま、売上の拡大を狙って、新商品「Y」を新たに販売することを考えています。
もし、その意思決定をした場合、社内やメンバーに、
「新たにYという商品について勉強しないといけない」
ということを強いることになります。
現場としては、Xだけを扱っているほうが圧倒的にラクです。
新しいことを始めるとき、現場から必ず不満は出てきます。
「そんな余裕はありません」
「うまくいくと思いません」
「これまでのやり方でいいのでは?」……
そんなネガティブな意見が必ず出ます。
ここで、意思決定の軸がブレてしまうでしょう。
・新商品Yを扱ったほうがさらに大きな売上が期待できる
・ただし、それによって現場に負担がかかってしまう
この2つの思いに揺れるからです。
ただ、そこで意思決定者は、「自分の評価を獲得すること」を基準にしてください。
責任と一緒に「堂々と伝える」
もちろん、Yを扱うことによって、どれだけの売上アップが期待できるかを計算することは大事です。
・商品Xだけだと売上予測がいくらになるのか
・新商品Yを扱うと売上予測がいくらになり、それによりXの売上はいくら下がる可能性があるのか
そういう予測を立てると思います。
その結果、Yを採用するのであれば、
「新商品Yを扱います。現場のみなさんはその商品情報を学ぶようにしてください」
ということを伝えなくてはいけない。
そして、その後、予測通りの売上になっているかをチェックしていきます。
さらに、そこで結果がついてこないときに、
「やはり新商品Yを売ることは、やめます」
ということになっても、それを堂々と伝えないといけない。
もちろん、その負担が大きすぎるあまり、これまでの業務に大きな影響を及ぼすようなら、検討の余地があります。
・新商品Yを扱うことによって、Xの売上は半分以下に落ち込む
そのように、デメリットが大きすぎる場合は、それを考慮すべきです。
しかし、「多少の負担が増える」程度であれば、堂々と伝えなければいけない。
その責任を引き受けましょう。
企業として、市場で競争している限りは、つねに変化し続けないと勝てない世界なのです。
「成長意欲」を前提とする
欲を言うと、現場から、
「新しいことをやらせてください!」
という声が出てくることが理想かもしれません。
ただ、それはどうしても個人差があります。
わかりやすく成長したいことを言葉にする人は成長意欲があるように見えてしまうことでしょう。
しかし、そういう意欲があるように見えない人でも、心の奥底では、成長を求めているはずです。
実際にやったあとに、「やってみてよかったです」と、あとから成長意欲があったことがわかるのです。
だから、まずは新商品Yがうまくいくことを信じて取り組む。
ちゃんと利益が出てくれば、誰もが「やってよかった」と思うはずです。
もし、うまくいかないときは、「撤退するライン」を決めておき、そのときにまた意思決定をする。
・1年後にYの売上が「月に50万円未満」の場合は、やめる
そうやって期限を設定して前進し続けるのです。
顔色をうかがいすぎる弊害
ここまでの話は別に、「現場の声を無視しろ」ということではありません。
たとえば、
「新商品Yを扱うにあたって、現場のメンバーは半年以内に資格の取得が必要になる。コストが大きすぎる」
という情報共有があるとします。
その負担によって、
「どれくらいの時間が必要になるのか」
「どれほどの残業時間が増えてしまうのか」
「どれくらい既存の売上にマイナスの影響があるのか」
などを検討する必要はあります。
その情報共有は、現場の「権限」として、やらないといけないことです。
その事実を受けて、上にいる人は、「人員を増やす」「業務改革をおこなう」といった、新たな意思決定が求められます。
そうやって、ボトムアップとトップダウンを繰り返していくのです。
もっともよくないのは、「多少の現場の負荷を大事件として扱い、半年後や1年後の売上拡大のチャンスを逃す」ということです。
現場からの「しんどい」「めんどくさい」という感想レベルの不満には負けないようにしましょう。
働いている以上、ある程度の負荷は、成長のためにつねに付きまといます。
意思決定は、人の顔色を見ておこなうことではないのです。
(本稿は、『パーフェクトな意思決定』の著者・安藤広大氏が特別に書き下ろしたものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業副本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出合い、2013年に独立。多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年足らずで上場を果たし、これまで9年間で約4400社に識学メソッドが導入されている。著書にシリーズ累計150万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)がある。『パーフェクトな意思決定』はシリーズ最新刊。