「売れてない」日本
なぜ利益は世界一?

 さらに注目したいのが、所在地別の営業利益です。下グラフをみると、当期5兆円の営業利益のうち、日本が3.5兆円と全体の7割を占めています。

 しかし前ページで指摘した通り、日本での販売台数は全体の2割しかありません。ほかの所在地と比べても売れていないのに「なぜ?」と一見不思議に思えますが、これは営業利益が「工場の所在地」(車両を生産した場所)で分類されているためです。

 トヨタは、全車両の44%を国内で生産する(→下グラフ)一方で、全体の約8割を海外で売り上げています。

 つまり多くの車両を輸出し、世界各地で得た利益を国内の利益として分類しているため、国内販売台数が前期から減少しても、利益が1.6兆円も増加しているのです。

 このようにトヨタは、国内工場で車両を製造し、それを大量に輸出することで、円安と海外での値上げの恩恵を最大限享受していることがわかります。

《『決算書「分析」超入門2025』では、トヨタのバランスシート、キャッシュ・フロー計算書、株価の変動についても詳しく分析しています》

書影『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2025』(朝日新聞出版)『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2025』(朝日新聞出版)
佐伯良隆 著