自動車・サプライヤー SOS#1Photo:Vectorig/gettyimages

ダイヤモンド編集部は、自動車メーカーによる「下請けいじめ」の実態などを解明するため、サプライヤー幹部らを対象にした緊急アンケートを実施した。特集『自動車・サプライヤー SOS』の#1では、部品メーカー幹部らに、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の「役員のビジョン」や「値上げ許容度」「交渉の態度、コンプラ」などを辛口評価してもらい、問題点を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

日産は、公取委の勧告後も割戻金の支払い求める
ホンダも部品メーカーにリベート要求

 トヨタ自動車がわが世の春を謳歌している。2024年3月期は、日本企業で過去最高となる5兆円超の営業利益をたたき出した。ホンダも同決算期、過去最高となる1兆円超の純利益を計上するなど、自動車業界は絶頂にあるように見える。

 しかし、トヨタやホンダ、日産自動車などに部品を供給するサプライヤーは、過去最高益の恩恵に浴するどころか、原材料価格の高騰といったコスト増を製品価格に転嫁できず、窮地に陥っているところが少なくない。

 その上、今後厳しさが増すことさえあり得る。(1)人件費のさらなる上昇、(2)温室効果ガス削減のためのコストアップ、(3)電気自動車(EV)化やギガキャストといったテクノロジーの転換――といった三重苦が襲ってくるからだ(詳細は、本特集の#8『トヨタのケイレツが「強み」から「リスク」になった理由、ヒエラルキー構造が機動力を奪いEVやスマホ化に対応できず』参照)。

 そこで、ダイヤモンド編集部は、トヨタを頂点とするケイレツに代表される日本の自動車業界のサプライチェーンの持続可能性を調べるため、「自動車メーカー取引先アンケート」を実施した。

 すると、経営状況が「非常に悪い」「悪い」「どちらかといえば悪い」とした回答数が、「非常に良い」「良い」「どちらかといえば良い」とした回答数を上回った。回答者の過半が、売上高500億円以上で、完成車メーカーに直接製品を納めるティア1企業の関係者であるにもかかわらず、である。

 次ページでは、苦境にあるサプライヤー幹部らが、トヨタ、ホンダ、日産をどう評価しているかを明らかにする。「役員のビジョン」や「値上げ許容度」「サプライヤーへの支援」「生産計画(内示)の確からしさ」「交渉の態度、コンプラ意識」の5項目について、日系三大自動車メーカーの得点を公開した上で、具体的な商取引の問題点を解明する。

 また、トヨタ系のティア1がサプライヤーに4月から何パーセントの値上げを容認したかや、日産の一部社員がどのようなロジックで割戻金(リベート)の支払い要求を続けているか、ホンダが受注額の何パーセントのリベートの支払いを求めているかといった生々しい情報も開陳する。