セブン&アイ・ホールディングスは10月10日、構造改革に向けた方針を公表した。柱がイトーヨーカ堂などを傘下に収める中間持ち株会社の設立だ。これは祖業の「売却」や「切り離し」などと報じられたが実情は異なる。むしろ、セブン&アイや創業家がヨーカ堂の主導権を握り続ける意思を示したものだ。セブン&アイが真逆である「売却」報道を黙認した背景に加え、新たに設けた持ち株会社に戦略的パートナーを招く方針を決めた理由も明らかにする。(ダイヤモンド編集部 下本菜実、澤 俊太郎)
セブンが中間持ち株会社を設立
ヨーカ堂の「売却」報道は黙認
「グループ構造を最適化して、SST(スーパーストア)事業グループについても成長戦略を強化する」。セブン&アイ・ホールディングスが10月10日に開いた2024年3~8月期決算説明会で、井阪隆一社長はそう強調した。
この日、セブン&アイは、11日付で中間持ち株会社のヨーク・ホールディングスを設立させると発表した。同社の傘下には、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなどSST事業を中心とする31社を収める。中間持ち株会社は25年度中には持ち分法適用会社化する計画で、27年度以降の上場を目指す。
併せて、セブン&アイは、来年に社名をセブン-イレブン・コーポレーション(仮)に変更する方針も発表。コンビニエンスストア事業の重視を明確にした。
そうしたセブン&アイの構造改革を巡っては、10日の公表前から、激しい報道合戦が繰り広げられてきた。特に、ヨーカ堂に関しては「売却」や「切り離し」などと祖業との決別を決めたかのような中身が目立った。
だが、実際のところは真逆といえる。今回のスキームは、セブン&アイや創業家が祖業であるヨーカ堂の主導権を握り続ける意思を示したものといえるのだ。ではなぜセブン&アイは、「売却」報道を黙認したのか。次ページでは、その背景を解説する。
また、今回、セブン&アイは中間持ち株会社に今後、戦略的パートナーを招く新たな方針も示した。関係者への取材を基にその狙いに加え、現時点で想定されているパートナー候補ついても明らかにしていく。