ノルウェーの北方、北極海に浮かぶスバールバル諸島は、ホッキョクグマが何百頭も生息し、オーロラの絶景を望める場所だ。だが人口3000人に満たないこの場所が今、北極圏の貿易ルートを西側諸国に代わって支配し、軍事プレゼンスを拡大しようとするロシアと中国の試みの最前線に浮上している。米東部ウェストバージニア州ほどの広さに山々や氷河、フィヨルドが集まるスバールバル諸島は、正式にはノルウェーの領土だが、特異な立場に置かれている。1920年に締結された条約はノルウェーに主権を与える一方で、ソ連を含む署名国が資源開発や調査を行うことを認めていた。だが近年、この奇妙な取り決めがロシアや中国にとって、ウクライナ侵攻を巡り西側との緊張関係が悪化するなか、北極圏での足場を固める手段となっており、ノルウェーや北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は警戒を強めている。