それはともかく、新型AMG GTクーペである。春に日本でも正式発表されたこのクルマは2014年にリリースされた第1世代を進化させたもの。モータースポーツ分野を含め10年間活躍してきたモデルのバージョンアップ版だ。変更点はさまざまでフルモデルチェンジとも呼ばれるが、個人的にはそうではないと思う。基本路線は変わっていないし、大幅な技術革新はない。それに、この手のモデルははじめから完成度が高いので、後から手を入れにくいという事情もある。メルセデスが定義するロングノーズ&ショートデッキのプロポーションは普遍だ。

 デザインは彼らの他のモデルと合わせるために進化した。メルセデスのデザイン言語“センシュアル・ピュリティ”+“AMGのDNA”をより現代的に解釈している。縦のラインのワイドグリルやLEDのデイタイムライトなどがそう。至ってモダンである。

 ボディフレームは、アルミニウム、スチール、マグネシウム、カーボンといった素材を組み合わせて成形する。目的は剛性アップと軽量化で、新型はそれを向上させた。形状は今回2+2シートを採用するのとフロントアクスルを駆動させるため再設計している。

585psのハイパワーを見事に飼い慣らす
快適にして豪放、まさにメルセデスの世界

 パワーソースはこれまでと同じ4L・V8ツインターボで、最高出力585ps、最大トルク800Nmを発揮する。2基のタービンはバンク角の内側に収まるホットインサイドV。オイル潤滑はドライサンプ式となる。エンジン型式はM177。従来型のM178とはヘッド回りやプログラミングが異なる。ちなみに従来型のトップエンドに君臨するAMG GT Rは最高出力585ps、最大トルク700Nmだった。

 気になったのは“ダイナミックエンジンマウント”と呼ばれるアイテム。これは磁性流体と円環状コイルが作る磁界強度を変化させマウントの硬さを無段階で調整する。エンジンの振動をシャシーに伝えるのを和らげるのだ。この効果はそのまま乗り心地に直結するだけにありがたい。