トータルバランスを考慮した公道最速仕様
いまポルシェにとって「GTS」とは、カイエンやマカン、パナメーラ、718ボクスター&ケイマン、そして電気自動車のタイカンとすべてに設定されている、特別なモデルを意味するものだ。サーキットでの速さではGT3やGT4、最高出力ではターボやターボSには及ばないものの、トータルバランスを重視した、公道最速仕様といえるかもしれない。
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911シリーズには、現行タイプ992の発売から約2年半を経て、「GTS」モデルが追加された。カレラSと比べると最高出力30ps/最大トルク40Nmのアップとなっており、よりスポーティなキャラクターが与えられている。また、バリエーション豊富で、「911カレラGTS」をはじめ、「911 カレラ GTS カブリオレ」、「911 カレラ 4 GTS」、「911 カレラ 4 GTS カブリオレ」、「911 タルガ 4 GTS」が用意されている。
エクステリアは、フロントバンパーのエアインテーク部やリアのエンジンフードのルーバー、マフラーまわり、アルミホイールなどがブラック基調のスポーティなデザインとなるのがこの新型GTSに共通する特徴だ。
今回の試乗車はベーシックな二輪駆動(RR)の「911カレラGTS」。しかも7速マニュアルトランスミッションだった。いまや500ps級のスポーツカーにMTが用意されることはほとんどない。しかし、ポルシェはあえてこの二駆のカレラGTSクーペにのみ8速PDKに加えて、MTを設定している。また「GTS」モデルではこれまで国内仕様に設定のなかった左ハンドルが選べるようになっている。ちなみにこのモデル以外に911でMTが欲しいとなると、選べるのはGT3のみ。こちらも本来は7速PDKで、6速MTがオプション扱いとなる。
ブラック基調のスポーティなインテリア
インテリアはブラック基調で統一されており、試乗車にはオプションのCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)製フルバケットシートが装着されていた。表皮はレザーとRace-Texという高品質なマイクロファイバー素材を組み合わせており、サポート性はもちろん肌触りも良好なものだ。フルバケットシートというと、身動きがとれずリラックスできないものを想像するかもしれないが、実際に運転操作をするという点においては、体をホールドしてくれるシートほど運転がしやすいし、長距離ドライブでも疲れない。ただし、問題もあってこれを選ぶとリアシートに乗り降りすることが不可能なため後席レスの2座仕様になってしまう。GTSのキャラクターを考えれば、やはり後席はあったほうが使いやすいだろう。