リフレ政策による政府純負債比率の低下効果は抜群

 そこで最後に中央政府だけを対象に、その純金融負債のGDP比率の変化を要因別に分けた結果をお見せしよう(図表2、年度ベース)。政府純金融負債のGDP比率の変化は次の4つの要因に分解できる。

 ①分母になる名目GDPの変化、②財政収支(ここでは資金循環表の中央政府の年間資金過不足フロー)、③資産価値の変化、④負債価値の変化(ここでは負債総額の変化から②の資金過不足分を除いた残余額)。

 図表2を見ると、2021~23年度の中央政府の純負債比率の低下(年率平均6.5%ポイント)は、資産価値の増加(濃い青色)(3年度平均3.6%ポイント)と名目GDP伸び率の上昇(水色)(同5.3%ポイント)によるところが大きいことが分かる。

 資産価値の増加の最大の要因は外貨準備(約1.2兆ドル)の円換算額が円安で増加していることだ。従って、今後円高に振れる場合にはマイナスに転じ得る。一方、名目GDP伸び率は実質GDP伸び率とインフレ率の合計であり、インフレ目標の2%程度のインフレを伴う経済成長が持続し、国債の実質マイナス金利が持続する限り、中央政府債務のGDP比率の低下に寄与する。

 要するにGDP比で見た政府純負債の安定化、縮小のためには、実質ベースの適度な低金利を伴うリフレ的な政策の継続が欠かせない。ただし2012年12月に第2次安倍内閣がスタートしたときのようなデフレ・円高・高失業率の状況は終わり、人手不足(労働力制約)とインフレ率の底上げがすでに始まっている。

 ここからは、金融・財政面でのリフレ政策をよりマイルドな方向に調整し、特に財政は最終需要補完目的のバラマキではなく、労働力を節約する機械への代替、それに伴うビジネモデルや産業構造の転換を助成・促進する方向に財政支出の内訳を変えていくべきだろう。

(竹中正治 龍谷大学経済学部教授)