米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領は、最初の任期中に関税を経済外交政策の手段として復活させた。他国との通商で有利な条件を引き出すために関税発動を利用した。その結果、世界の貿易システムに多少の摩擦は生じたものの、全体的に大きな影響はなかった。トランプ氏が今回の選挙遊説で訴えている政策を再選後の第2次トランプ政権下で実行するとなれば、状況は全く異なるはずだ。単なる交渉の手段にとどまらず、関税引き上げ自体が目的になるだろう。ある試算によると、関税は1930年以降で最も高水準になる可能性がある。短期的には、米国で一部の価格が上昇し、輸入品への新たな課税に消費者や企業が適応する中で、経済成長が阻害されるかもしれない。長期的な影響は、他の国々が報復するかどうか、トランプ氏が交渉にどの程度応じるつもりかで決定的に変わってくる。その結果としては、全面的な貿易戦争のほか、中国に不満を募らせる米同盟国が新たな貿易システムを作るなど、さまざまな事態が起こり得る。