松井英幸氏は、パワハラによって名門ラグビー部の監督を退任された後、自分の価値観を押しつける誤った指導法に気づいたという。現在は、指導者の育成に携わる一方で「俺みたいにはなるな!」と講演活動にいそしむ日々だ。そんな松井氏が、現場の指導者に伝えたいこととは。本稿は、松井英幸『パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
真剣に叱ることが
愛だと思っていた
私は自分の正しさ、自分の価値観を押しつけ、相手の行動を変えようとしていた。それが愛だと思ったし、真剣に叱ることが愛だと思っていた。
だが、そういう思いが、いつの頃からか伝わらなくなってきたのだ。
でもそれは、すべてはチームのために、そして部員たちのためにと思ってやってきたことだ。
流通経済大学付属柏高校ラグビー部では毎年、卒業式の前日に卒部式を行っている。卒部式には卒業生の親御さんも招き、学校のグラウンドで卒業生と1、2年生が試合を行う。親御さんたちも、お子さんと同じジャージを着て試合に参加する。OBも卒部式に駆けつけ、卒業生だけでなく、2年生と1年生の部員たちとも試合をしてくれていた。
卒部式は、卒業生と在校生、OBに加え、親御さんが集まる唯一の機会で、総勢約200人がグラウンドを埋め尽くす。試合が終わったあとは、みんなで豚汁の炊き出しをしたり、バーベキューを楽しむのだ。
卒部式のイベントが一巡したあと、卒業生、親御さん、在校生、OBが車座になってグラウンドに座り、セレモニーを行う。
私は毎年、卒業生1人ひとりに卒業の記念品を手渡し、1人について10分ぐらいで3年間の思い出を、みんなの前で語った。