一般社団法人日本スポーツマンシップ協会代表理事であり、千葉商科大学サービス創造学部准教授の中村聡宏氏(48)。これまで多くの指導者と共に仕事をこなし、自身も教育者として教壇に立つ。そんな中村氏は、スポーツや学校教育のあり方は変わるべきだと考える。時代に合わせた柔軟な指導方法が導入される中、そうなっていない現場があるようだ。たとえば、中村氏が30年前に学んだ教育方法が、今の時代においても何の疑いもないまま使われているケースがあるという。いわゆる上位下達のものだ。今の学生がそれを学んで次に教壇に立った場合、40年、50年と昔の指導方法が継承されることとなってしまうのだ。第1回、第2回、第3回に続き、「自分たちの世代が中継ぎとして重要である」と考える中村氏に、指導者のあるべき姿について聞いた。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
日本の「体育」で行われる
軍隊さながらのスポーツ教育
スポーツの歴史を紐解くと、教育ソフトとしての活用が盛んになったのは、19世紀後半のイングランドのパブリックスクールが始まりといわれています。植民地政策のマネジャーを育てることを目的にしていた部分もあるようで、スポーツを通して思考を行動に変え、集団の中でチームワークを育んでいました。心と体のバランスの取れた人材育成が目的であり、エリート教育の側面もあったようです。
一方で日本でのスポーツは、「体育」というイメージの方が強いのではないでしょうか。走ったり、泳いだり、飛んだりと、色々と義務的に実施することで競技を体験的に学べる。全員に対して最低限の運動能力を身に付けられる仕組みである一方で、その運動能力に基づいて教員から評価されることになる。足の速い人と競争した結果で評価されたりすることを、理不尽に感じる人もいるでしょう。