「わからないなりに読む」と得られる学び

 僕たちメガバンク行員は入行してからすぐに半ば強制的に日経新聞の定期購読を始めることになります。若手のうちは、よくも分からずとりあえず眺めるような形で読むのですが、実はこの行動が結構重要です。わからないなりに1ヵ月くらい続けていると、日本の経済において何が重要で何が重要じゃないのか、その見出しの大きさで分かるようになってきます。特に経済学部出身ではない新人にとってはこの流し読みを続けるだけでビジネスセンスが少しずつ身についていきます。

 また、新聞を読む習慣は社内外のコミュニケーションで役に立ちます。

 たとえば社内においては、ほぼ全員が日経新聞を購読しているわけですから共通言語として非常に有用です。

 加えて、記事の内容によっては、深く読み込むだけで先輩や上司に対して優位に立ち回ることも可能です。人によっては見落としていることもあるので、先輩に対して「先輩の取引先がニュースになってましたけどあれって知ってました?」みたいな話題の振り方をすることもできるようになってきます。

「新聞を読んでいるヤツ」というイメージも有利

 僕の職場では「日経新聞を読み込んでいるイメージ」が定着することは非常に重要です。

 なぜなら、忙しい先輩にとって「あいつは新聞のことを聞いたら教えてくれる、使える後輩だ」と認知してもらうことができるからです。また、先輩からその記事に対するコメントをインプットすることで、お客さんとの会話にも繋げることが可能になります。

 このように、新聞を読む習慣をつけていると様々な面で得をします。仕事の実力がつくことはもちろん、周りからの評価や評判・イメージもついてきます(業界によっては「日経新聞ではなくて別のメディアのほうが重視されている」などの差はあるかもしれませんが、こういった共通言語的な情報に常にキャッチアップしておくことはいずれにせよ大切です)。

 仕事は自分ひとりでできるわけではありません。特に「なんとなくのイメージ」ができあがりやすい会社において、こういった立ち振る舞いを戦略的にしておくことは重要です。新聞を読めば本業にも役立ちますし、まさに一石二鳥と言えるでしょう。

(本記事は『雑用は上司の隣でやりなさい』の著者による特別な書き下ろし原稿です)