子どもの勉強が上手くいかない親子のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

娘に英語を勉強させるため、片道2時間かけて北関東から都内のインターに通った――。「教育熱心のつもりが教育虐待になってしまった」というのはシングルマザーのH子さん(40代)。習い事をいくつも掛け持ちし、学校のテストも100点以外は認めなかった。教育虐待ママが背負った「大きすぎる代償」とは?また、自らの過ちにどうやって気づくことができたのか。H子さんに話を聞いた。(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)

連載「親を捨てる」の新着記事を読み逃したくない方は、連載のフォローがおすすめです。メールで記事を受け取ることができます。

「もう無理かもしれない」
娘が限界を迎えた朝

 4年前の11月、朝起きると異変に気がついた。当時、高校1年の娘が疲れ果てていたのかリビングの床の上で、死んだように寝落ちしていた。そして「ママ、私、あの学校に通うのはもう無理かもしれない」と、つぶやいた。

「いつもだったら『何を言っているの、早く学校に行きなさい!』と、叱っていたと思いましたが、そのときの娘の様子は違っていたので、無理に通わせたら本当に死んでしまうのではないかと心配しました。『もう無理しなくていいよ』と、しばらく学校を休ませて、通信制の高校に転校することにしました」(H子さん)

 娘には無理をさせているとは感じていた。医療機関で専門職として働くH子さんは職場の上司と話す機会を得た。その上司から思いがけない言葉をかけられた。

「娘の話をしっかりと聞いているのかと問われました。振り返ってみると幼い頃から私が一方的にガミガミと小言を言っているだけで、娘からはこうしたい、こう思っているといった話は聞いてこなかったことに気がつきました」

「もっと娘の話を聞くようにと言われ、一対一よりも、専門家が間に入ったほうが親に気兼ねしないで話すことができるのではないかと、娘が高1のときから今まで定期的にカウンセラーと3人で対話をする時間を作ってもらっています」

 H子さんと娘が同じ空間でそれぞれオンラインでカウンセラーと対話を重ねる「ダイアローグ」という手法だ。そこで、娘の本音や勉強がしんどいといった気持ちを初めて聞いた。