挫折の可能性を減らすための
正しい目標設定には努力が必要

 われわれが注目した典型的なマーケティングの実験に、クーポンの有効期限に関するものがある。クーポンに有効期限を設けると、期限がない場合よりも利用率が上がることを示した実験で、研究者たちはこの現象を「デッドライン効果」と呼んでいる。期限が近づくと、消費者はクーポンを無駄にしたくないため、忘れずに使おうと気をつけるようになるのである。この現象は有効期間の長さにかかわらず生じる。

 目標設定においても、これとまったく同じ傾向が見られる。だからこそ、守るべき期限を設けることは、たとえその分の負荷を自分に課すことになっても、意味があることだといえる。

 このことは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生たちを対象とした実験でも示された。学生たちは課題論文を学期末にまとめて提出するか、論文ごとに提出期限を設けるかの選択肢を与えられた。ただし、自ら課した期限を守れなければ、遅延1日ごとに評価が1%ずつ減点されるという条件つきだ。それにもかかわらず、学生の多くは論文ごとに提出期限を設けるほうを選択した。彼らは、そうすることで勉強の能率が上がり、論文の出来もよくなることを知っていたからだ。