ナレーションを担当する羽目にもなったスタン・リーだが、番組のことは嫌っていた。

 ノース・キャロライナ州シャーロットで1984年に開催されたヒーローズ・コン〔コンベンション〕でわざわざファンに向かってこう言ったほどだ。

「迂闊にもスパイダーマンにチャンネルを合わせてしまった諸君は、スパイダーマンがアイスマンとファイアスターという女の子と3人でチームを組んでるのを観たと思います……。

 それについても、ここでちょっと謝らせてください。テレビの主要ネットワーク局の仕組みというのは、私が実写シリーズのコンサルタントだったときも同じでした。つまり、ネット局に出向いて『こういう番組をやりたいんだ。買ってくれるか?』と言うと相手は『よし、買うよ』と言う。でも、こちらが望むようには、やってくれないということなんですよ」

「スパイダーマンに主役は無理なので女の子と…」約40年前のテレビ放映時につけられた「驚きのタイトル」『MCU 比類なき映画スタジオの驚異的〔マーベル〕な逆転物語』(ジョアンナ・ロビンソン、デイヴ・ゴンザレス、ギャヴィン・エドワーズ、フィルムアート社)

 マーベルが所有するキャラクターを使った映画やテレビ番組を作るためにハリウッドの興味を引こうと奮闘したスタン・リーの努力は、ほぼ報われなかった。