支払いが後ろにずれることで、球団は手元に残った資金を他の選手の獲得や球団運営に使うことができるのです。単に総額を提示するだけでなく、支払いスケジュールをずらすことで、相手にとっても魅力的な提案になったと思われます。
次に、「場所をずらす」という概念について説明します。
これは、実際の交渉場所を変えるという意味もありますが、交渉の対象となる事柄を変えるという意味にもなります。
例えば、トラブル交渉などで相手と対立した場合、自分の主張や正当性を最も強くアピールできる1点に焦点を絞ることで、交渉を有利に進めることができます。
これは、どちらかに明らかに100%落ち度があるような場合ではなくて、どちらにも言い分があるようなトラブル交渉を前提としています。
こういう場合は、自分に有利な交渉材料を前面に出し、その切り口のみで相手に対抗し、一点突破でピンチを切り抜けるのです。
「まずは、この点について解決しましょう」と進めるのです。どこを一点突破するかの見極めが重要です。客観性があったり、社会通念上主張できそうなものがあれば、それを強調するのです。
ただし、相手を追い詰めすぎない余裕も必要です。一点突破はあくまでも作戦です。交渉全体を俯瞰しながら、円満解決の道を探ることが大切です。
一般的には、交渉はパッケージで考えるのが原則ですが、特定の状況では一点突破の方法も有効です。
交渉の際には、時と場所をずらすことで、交渉の幅を広げたり、焦点を絞ることができます。このような柔軟な発想が交渉には必要なのです。
・時をずらすことで、相手にメリットを与え、交渉を有利に展開する。
・特定の状況では、自分に有利な一点突破の交渉が有効な時もある。