仕事への情熱が生んだ巨大フランチャイズチェーン

 徹底したセールスマン街道を歩んできたクロックだったが、金儲けのためだけにマクドナルドを成長させたわけではない。彼は従業員に常に「金儲けをしようと考えるより、いい仕事をすることを心がけよ」と話していたという。そうすれば結果は自ずとついてくるというわけだ。

 事実、フランチャイズの展開を始めた当初のクロックはかなり苦しい経済状況にあった。だが、彼は短期的に結果が得られる安易な手法は選ばずに地道にフランチャイジーとの関係を築き、品質とサービスの向上に努めていった。

 こうした彼の仕事を愛する気持ちは部下やフランチャイズの加盟者に確実に伝わっていく。やがて競合店との過当競争が熾烈になるとクロックはそれまでのメニューに加えて新メニューの開発に着手するが、ヒットメニューの多くが加盟店から生まれてきたことからもそれはわかるだろう。

 今やお馴染みのビッグマックやフィレオフィッシュといった商品も、客のニーズを直に感じてリサーチすることのできる加盟店のアイデアから開発されたものだ。ご存知のとおり、これらの商品は客の心を掴んで定番メニューの座を獲得していく。

 1968年、このクロックの理念を引き継いだフレッド・ターナーがマクドナルド・コーポレーションの社長となったのちもマクドナルドは他の追随を許さない成長を遂げ、現在では世界115カ国に4万1800店以上を展開するグローバルレストランカンパニーになっている。

 クロックは「ハンバーガーのバンズの美しさは一般の人々には理解できないだろう」と発言したというほど、誰よりもマクドナルドのハンバーガーを愛した人物だった。そして自分が惚れこんだ商品をできるだけ多くの人々に届けたかったのである。

 そうした彼の仕事への情熱が何より巨大フランチャイズチェーンの誕生につながったにちがいない。