不適切な会計処理の末、経営破綻に追い込まれる『粉飾倒産』が急増している。売り上げの架空計上や融通手形、簿外債務など、その手口は多種多様だ。帝国データバンクによれば、2024年の『粉飾倒産』は9月までで74件判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1~9月)における最多を更新した。このままのペースで推移すれば、年間最多件数(2019年・84件)を更新するのは確実とみられる。(帝国データバンク 情報統括部 情報編集課長 内藤 修)
50億円超の負債を抱えて
経営破綻した「旭機工」
太陽光発電関連事業を展開する「旭機工」(東京都)は9月3日、50億円超の負債を抱えて東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。同社は1995年7月に設立され、準大手ゼネコンなどを得意先に、下水道工事や建設工事などの建設現場で使用される鋼製の防音壁の賃貸・販売を手がけていた。
介護・福祉用具のレンタル会社や代理店、自治体、リース会社などを得意先として、海外メーカーの可搬型階段昇降機(車椅子用)や電動車椅子の販売・レンタルも手がけていた。2018年6月期ごろからは太陽光発電設備の施工、同権利付き土地・設備一式の保有・売買も行っていた。太陽光関連事業が主力事業に成長した2020年6月期には年売上高約51億5400万円を計上していた。
しかし、新型コロナ感染拡大の影響で営業活動が制限されたうえ、太陽光関連事業において発電設備の施工や引き渡しの延期を余儀なくされ、売り上げが大幅に落ち込み、資金繰りが悪化していた。
このため、金融機関に対して借入金の返済条件変更を要請するなど経営改善に努めたものの、金融機関から支援を受ける過程で実施した資産査定において、以前から不適切な会計処理を行っていたことが発覚。その結果、実態は大幅な債務超過に陥っていることが判明した。
その後も、金融機関から返済猶予の支援を受けるなど立て直しを図ったものの、長引く新型コロナの影響に伴い業況に回復が見られず、先行きの見通しが立たなくなったことから、一部事業を他社へ譲渡した後に今回の措置となった。