保育士と幼児写真はイメージです Photo:PIXTA

「子どもが3歳になるまでは、母親の手で育てないと成長に悪影響」という「3歳児神話」や「小さいのに保育園に預けられてかわいそう」といった声は、共働きが当たり前となった現代でもなくならない。子どもを保育園に預けることは正しい選択なのか――人類の進化の過程から見えてきたものとは。※本稿は、出口治明『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』(角川新書、KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

女性は出産と同時に
愛情ホルモンを分泌する

 人間は、ほかの動物と違って子育てに時間がかかります。時間がかかる理由はおもに2つあります。

【人間を育てるのに時間がかかる2つの理由】

(1)人間は、頭が大きくなり二足歩行をする動物だから。

 人間は、ほかの動物にはない2つの特徴を有しています。「頭(脳)が大きい」ことと、「二足歩行をする」ことです。

 二足歩行をするために骨盤が小さくなり、骨盤が小さくなったことで産道が狭くなりました。産道が狭い上に頭が大きいという2つの制約から、人間の赤ちゃんは正常分娩であっても、未熟児スレスレの状態で生まれるしかないのです。

 ほかの動物は生後数時間で立ち上がりますが、人間の赤ちゃんがつかまり立ちをする目安は、生後8~11カ月といわれています。予定日に生まれても、人間はあまりに幼いため、すぐに立つことはできません。だから人間の女性は出産と同時に愛情ホルモン(オキシトシン)を大量に分泌します。これが母性愛の正体ですが、そうしないと赤ちゃんの面倒が見られないからです。

 ほかの動物と違って、人間は成人になるまでに15~18年ほどかかります。つまり人間の子育てには、時間がかかるのです。