飢えた人に食べ物を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるのが教育だと僕は思います。

 人間が生きている現実の社会は、いろいろな制約があり、かなり複雑です。複雑になった社会で生きていくためには、社会のいくつもの前提条件を知る必要がある。だから、育てるのに時間がかかるのです。

「こんなに小さいときから保育園に預けられて、かわいそうに…」。

 働くお母さんがよくいわれる言葉です。

「子どもを常時家庭に置いて、母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす」という「3歳児神話」は、教育学的な見地からも、脳科学の見地からも、合理的な根拠は何ひとつ認められないことが明らかになっています。3歳児神話は、さながら「3歳児デマ」そのものです。

 既に1998年の厚生白書が、「母親が育児に専念することは歴史的に見て普遍的なものでもないし、たいていの育児は父親(男性)によっても遂行可能」と指摘して、3歳児神話を退けています。