海外移住を目指す人のなかには、永住権取得のプロセスとして現地のカレッジに入学するケースもあるという。朝日新聞の人気連載「わたしが日本を出た理由」に登場したヨシアキさんは、家族4人でカナダに渡り、永住権取得も視野に学生生活を送っている。思い切った決断に至った経緯とは?※本稿は、朝日新聞「わたしが日本を出た理由」取材班『ルポ 若者流出』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
現地のカレッジに通いながら
カナダでの子育てに奮闘中
妻子とともにカナダへと渡り、カレッジで学ぶ日本人もいる。日本の大手メーカーなどでセールスエンジニアとして働いてきたヨシアキさん(40歳)は妻、小学生と未就学児の子どもの家族4人でトロントに移住した。
2022年9月からトロント東部にある「センテニアルカレッジ」で、コンピューターシステム分野を専攻している。日本でセールスエンジニアとして20年近く働いてきたが、それでもカナダでエンジニアとして就職する道は選ばなかった。就職には、現地での実務経験や人脈がなければ不利だとされるためだ。就職先を見つけるのに時間がかかるリスクもあった。
「以前、ほかの国に移住しようと思って、現地の企業に応募したときには、全く音沙汰無しで……。カレッジに行くことが、より早く動ける選択肢と考えました。年齢も年齢なので、早く動かないと身動きが取れなくなるという危機感もありました」
日本でのキャリアがあったにもかかわらず、カナダに渡った理由は、家族との時間を確保できる働き方を求めたからだ。
大学卒業後は、学校の推薦で大手情報通信メーカーに就職。セールスエンジニアとして営業の人と一緒に顧客のところに出向き、技術的な説明をしたり、システム全体の設計を手がけるような仕事をしたりしてきた。外資系の会社も含めて2度の転職も経験したが、日本で望むような働き方はできないように感じていた。