最もこの役職にふさわしい候補でありながら、歴代の前任者の誰にも見た目も行動も似ていない彼女が、承認されるまでのただでさえ険しい道のりがさらに険しくなったのは、おそらく口調が穏やかだったからです。
穏やかで控えめで貫禄がなくても
リーダーはじゅうぶんに務まる
一般的な「リーダーにふさわしい人」の定義に、イエレンは含まれていなかったのです。2013年7月、当時のワシントン・ポスト紙の記者エズラ・クラインは論説にこう書きました。
「私は驚くほど多くの同じパターンの議論をしてきました。対話の相手はこう言うのです。『イエレン氏は素晴らしい。しかし……』この『しかし』の後は同じ論旨となる。彼女は『タフさ』に欠ける。彼女は『貫禄』が足りない。『口調が穏やか』すぎる。『控えめ』すぎる」
記者は続けて、否定論者の本質を見抜いた指摘をしています。
「こういった苦言に共通するのは、ステレオタイプ的な男性の資質に基づいたリーダーシップの暗黙の定義だ。こういった資質は、すべての男性が備えているわけではなく、すべての女性に欠けているわけでもないが、女性よりも男性のほうが報われる傾向にある資質であるため、女性よりも男性に広く行きわたっているのだ」
イエレン氏は史上最も僅差で、この地位に就く初の女性として承認されましたが、指導的役割の女性を見る目は、彼女が権限を握って10年たってもなお、大幅に良くなったとは言えないようです。