12月利上げは否定されていない
「政治混迷で利上げ困難」と見るのは短絡的
日本銀行は10月31日の金融政策決定会合で、大方の予想通り金融政策の現状維持を決めた。ただ、植田和男総裁の記者会見には重要な変化があった。
8月上旬に米国経済指標の弱さなどから金融資本市場が混乱し、それ以来、日銀は、政策の判断には「時間的な余裕がある」という言い方を繰り返してきた。具体的には「次回の金融政策決定会合での利上げはない」という意味だ。
その「時間的余裕」という言葉が植田総裁の発言から消えた。植田総裁は記者会見で、金融資本市場が少しずつ安定を取り戻し米国経済のリスクの度合いが低下してきたとしつつ、「時間的余裕という表現は今後、使わない」と語った。
これによって12月決定会合での利上げが強く示唆されたわけではないが、「次回は利上げしない」という意味の言葉がなくなったのは重要な変化だ。
10月下旬以降は1ドル=150円台前半まで円安が再び進行し、米大統領選挙でトランプ前大統領の勝利が確実になった11月6日には154円台となった。そして国民民主党が自民、公明与党との経済政策や予算編成などでの「政策協力」で合意したことは、やや長い目で見れば利上げをむしろ後押しする要因になる可能性がある。