「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
「いつまでもいい関係でいられる親子」が大事にしている考え方
「親子の関係」以上に濃い関係はないと私は思っています。地球上に、何十億人もの人間がいるなかで、こうした人間関係が結べるというのは、実はすごい確率です。血のつながりとはそういうものです。
ですから、親とのあいだに苦い思い出があったり、なかなか解きほぐせないわだかまりがあったりしたとしても「親のことを大切にしていきたい」と思ったならば、親の存在をまるごと受け入れることが大切だと思います。受け入れる、それは愛の行為にほかなりません。
最後に、親とコミュニケーションする際に、どうしても覚えておいてほしいことがあります。それは「どんなに歳をとっても『親子』は『親子』のまま」であるということです。
あなたの親御さんは、あなたが寝返りも打てない頃から、立派な大人になるまで、ごはんを食べさせ、ときには叱り、愛を与え、見守り、支えてきました。1人の人間を大人に育て上げるのは、とても大変なことです。
どうしても、そのときに味わった苦労・経験があるため、あなたが大人になっても「私がついていなければダメなんだ」という思い込みが消えないことが少なくありません。それが自立した子どもにとっては、「迷惑」「おせっかい」「取り越し苦労」に感じられてしまうのです。
しかし、「いつまで経っても親子は親子のまま」だということに気づくとどうでしょう。親のアドバイスは「愛ゆえの心配なんだ」と理解できるのではないでしょうか。同時に「親がアドバイスをしたがるのは、自然な心の動きなんだ」とも理解できるはずです。そのことがわかれば、親に対して、多少なりとも寛容な心でいられるのではないでしょうか。
あなたが、仕事に邁進し、家庭を持ち、子どもを育てる立場になったとしても、親にとっては「子どもは子どものまま」です。この点について理解しておくと、親とのコミュニケーションがグッと楽に、そして深いものになっていくでしょう。