かくいう私自身も、実のところはただ愚痴をぶつけたいだけで、オネショの理由はわかっている。お葬式が入ると、戒名を考えたり、白木の位牌にその戒名を書いたり、葬儀前日には金襴の袈裟を法衣箪笥からゴソゴソ引っ張り出したりと、支度に追われて子供のことまで気が回らない。そうすると、寝る前に「トイレに行ってから寝るのよ」といういつものやり取りをつい怠ってしまう。これが最大の敗因である。
聖俗を行き来する
シングルファザー住職
布団にもぐったままスマホを操作し、グーグル先生に対処の仕方を尋ねると、「できるかぎり早めに処置を」「時間が経つにつれ臭いが取れなくなります」というもっとも欲しくない回答が出てくる。私が抱いていた「少しでも長く布団にもぐっていたい……」「お葬式が終わってから対応したい」という願望を、容赦なく打ち砕いていく。
ネット上の情報が的確な対処方法だというのもわかるので、ため息をついている間もなく、子供をたたき起こして布団を引きはがす。敷布団にしみ込んだオネショをタオルなどに吸い取らせ、布団カバーとパジャマを洗濯機に突っ込み、並行して朝ごはんの準備をして小学校と幼稚園に送り出す。