歩く和尚写真はイメージです Photo:PIXTA

自衛隊では「若年定年制」が敷かれており、民間企業の定年年齢よりも若い年齢での退官を強いられる。2022年現在、トップの将官でも60歳、1佐で57歳、2・3曹に至っては54歳で自衛隊を去ることが定められている。ただし、年金支給開始年齢は65歳と民間と変わらないため、必然的に再就職の必要が生じる。多くは自衛隊の支援を受けて再就職するが、退官後の人生は多種多様。中には自衛隊の経験を生かして世界の安全に貢献した者もいる。その代表的な人物が、元陸将の土井義尚氏だ。土井氏が地雷除去のNPO法人を設立した経緯や、和尚として世の安寧を祈り続ける現状を聞いた。(ライター 松田小牧)

永平寺での修行で
たどりついたシンプルな教え

 土井氏は1942年、甲府市にある曹洞宗寺院の次男として生まれた。防衛大学校に進み、陸上自衛隊幹部候補生学校時代にはコーヒーの自動販売機に細工をして同期に無料でふるまい、いったんは退校を命じられたといったやんちゃな一面を持つ。そんな土井氏は、防衛駐在官や武器学校長を経て1999年、補給統制本部長を最後に退官した。

「陸将」という、自衛隊トップの階級にいた土井氏が退官後にまず選んだのは、曹洞宗の本山である永平寺での修行だった。同寺の修行は非常に厳しいことで知られており、修行に挑むのは若者が中心。実家の住職であった兄からは「途中で下山すれば自衛隊将官の名折れだぞ。思い直したらどうだ」とも忠告された。