朝、スマートフォンのアラームがジリジリと鳴る。
幸せな眠りのなかから、意識が日常に戻ってくると、すぐそばで寝息を立てている長男の布団の異変に気付いて愕然とする。
「うわっ、冷たい……」
夢であることを期待して、もういちど布団を触るが、やっぱり冷たい。この感触は間違いなく「アレ」である。長男はまだ6歳になったばかり。年齢を考えれば責めるのはかわいそうなのだが、タイミングの悪いことに、長年お寺のために尽くしてこられた檀家総代の奥さまのお葬式が、午前中に入っている日だった。子供2人との3人暮らしが始まったばかりの頃で、私にとって初めてのオネショ処理。右も左もわからない。
言いようのない怒りがこみ上げる。「なんでお葬式にオネショをかぶせてくるのよ!」とスヤスヤ眠っている息子を全力で問い詰めてみるが、微塵も悪気がない息子は起きる気配すら見せない。幸せそうな寝顔は「なんでお葬式の日ってオネショしたらダメなの?」と逆に質問したそうにも見える。