初代「こども家庭庁」長官に
就任した渡辺由美子
山に囲まれた盆地にある長野県諏訪市。県立諏訪清陵高校の校風は「自治・質実剛健・勤勉努力」だ。地域の気候・風土の影響を濃厚に受け継いでいる。
「こども家庭庁」という政府の役所が、2023年4月にスタートした。こどもに関する所管が厚生労働省、文部科学省、農水省など様々な省庁に分かれ、縦割り行政になっている、という弊害を正そうという考えで、新設されたのだ。「こどもまんなか社会」の実現に向けた政府の司令塔だ。
その初代長官に就いたのは、渡辺由美子(1965年生まれ)。諏訪清陵高校を経て1988年3月に東京大文学部を卒業、旧厚生省に入省したキャリア官僚で、主に医療や介護の分野で頭角を現した。
厚生労働省では事務次官ポストに女性が就いた例があるが、それは旧労働省出身者に限られていた。渡辺が初代「こども家庭庁」長官に就任したことで、近い将来、旧厚生省出身で女性初の厚労省事務次官が生まれる可能性が出てきた。
諏訪清陵高校の同窓生の間では、この人事を高く評価している。「わが校のOGで、渡辺さんのように政府機関の中枢で活躍する女性が出てきたのは、うれしい」という声だ。諏訪清陵は「男っぽさ」が目立つ高校だったが、渡辺によってイメージの修正がはかれる、というわけだ。
戦後の学制改革で、旧制諏訪中学は新制諏訪清陵高校に衣更えされ、男女共学になった。しかし、女性の入学者は遅々として増えず、4年後にはゼロになってしまった。渡辺と同期入学の女性も、10人程度だった。
2015年入学生で初めて女子が上回るなどこの10年でやっと男女半々に近づいた。同じ諏訪市内にある県立諏訪二葉高校は、名門の旧制県立諏訪高等女学校を前身としており、全学年男女共学になったのは1989年のこと。女生徒は昭和時代まで諏訪二葉高校に吸引された、という背景もあった。