老後ひとり難民の
死亡届は誰が出すのか

 毎日新聞が全国の政令指定都市を対象として行った調査によれば、2015年度に亡くなった人の約30人に1人は遺体の引き取り手のない方だったといいます。

 また日本経済新聞の記事によれば、2018年度に全国20の政令指定都市が受け入れた無縁遺骨の数は8287柱にのぼり、この数は5年前の1.4倍だということです。

 無縁遺骨が増加している背景には、核家族化や人々のつながりの希薄化があるのでしょう。

 身寄りのない高齢者が増えたことにともない、「亡くなっても引き取り手がいない」というケースも増えているのです。

「老後ひとり難民」が亡くなった場合、死亡届を誰が出すのかが問題になるケースがあります。実は、死亡届は誰でも出せるわけではありません。

 戸籍法では、死亡届の「届出義務者」として、「同居の親族」「その他の同居者」「家主」「地主」「家屋管理人または土地管理人」と定めています。これら届出義務者がいない場合などで、病院で死亡した場合は、病院長が届出義務者になります。

 このほかに届け出をすることが認められる「届出資格者」として「同居の親族以外の親族」「後見人」「保佐人」「補助人」「任意後見人」「任意後見受任者」が定められています。

 つまり、同居者がいたり賃貸住宅や介護施設に住んでいたり、あるいは病院で亡くなったりした場合は、死亡届の届出義務者がいますが、持ち家に住む独居高齢者の場合、届出義務者が不在となってしまうわけです。

 もちろん同居親族以外の親族が届け出てくれるケースや、認知症などで後見人がついているなら、その後見人が届け出てくれるケースもあるでしょう。

 しかし、そういった人がいないケースのほうが多数派といえます。

 また、家主・地主や病院長のなかには、「届出義務者」であっても、死亡届を出すことをためらう人もいます。

 こうした場合、法に規定のない「死亡記載申出書」を提出することで、戸籍に死亡を記載する手続きが取られることもあります。