遺体の引き取りも必要です。病院で亡くなった場合、速やかに安置場所に移さなければなりませんし、そのためには葬儀社に連絡を取って、遺体搬送車を手配する必要があります。誰が葬儀社を選んで連絡するのでしょうか。

遺品整理、公共料金、サブスク
誰が処理するのか責任は曖昧

 亡くなったあとの家の片づけもあります。急に倒れてそのまま亡くなるようなケースでは、家に大量の荷物が残されることになるでしょう。その遺品の整理や処分は誰が行うのでしょうか。

 さらに、公共料金などの停止手続きも必要です。賃貸住宅や持ち家に住んでいる場合のガスや電気、水道料金や携帯電話料金のほか、昨今では有料の動画配信等のサブスクリプションサービス(サブスク/毎月など定期的に料金を支払うことで、商品やサービスをその都度購入することなく、それらを継続的に利用できる)を使っている人もいるかもしれません。

 火葬と埋葬の問題もあります。「自分の骨なんて、そのあたりにまいておいてくれればいい」などという高齢者もいらっしゃるそうですが、火葬を行うには、死亡届を出して、火葬許可証の交付を受ける必要があります。

 また、火葬後の遺骨を適当に取り扱うことはできません。

 墓地埋葬法では、遺骨は墓地に埋葬するか納骨堂に収蔵するかしなければならないと定められており、過去には「父親の遺骨の処置に困って駅のトイレに遺棄した息子が逮捕された」「妻の遺骨がじゃまになってコインロッカーに遺棄した夫が逮捕された」「遺骨や骨つぼをゴミ置き場に遺棄した石材店経営者が逮捕された」といった事件も起きています。

 このように、亡くなったあとには、病院・福祉施設などの費用精算、遺体の確認・引き取り指示、部屋の原状回復、残した家財・遺品の処分、公共料金や生前利用していたサービスの契約解除、火葬・埋葬など、さまざまな手続きが必要となります。

 そして、「老後ひとり難民」が亡くなったとき、これらについて誰が責任を持って行うのかは、極めて曖昧なのが実態なのです。

「老後ひとり難民」が亡くなった場合、誰が死亡届を出すのか。亡くなったあとに引き取り手のない遺骨は、「無縁遺骨」と呼ばれます。