ノジマは残存者利益を
上手にすくい取っている

 業界再編によって自分は逆に規模を増やす可能性があること、縮小する業界の中で残存者利益が見込めること、そしてそもそもオワコン業界であるがゆえに買収条件が有利なことです。

 携帯ショップ業界ではティーガイアが業界トップ、第2位がノジマ傘下のコネクシオです。そして業界構造的には4位以下が急激に企業規模が小さくなる構造です。

 前編で紹介したように、業界では毎年のように経営破たんや廃業が起きていますが、そのことによって残された業界大手に残存者利益がシフトしていきます。

 似たような形でトップ企業が規模を増やした事例に、DVDレンタル業界があります。業界全体が大幅に縮小する中で業界トップのGEOが相対的なシェアを上げ続け、ほぼ業界一強の地位にたどり着きました。それと同じことがこれから携帯ショップ業界にも起きそうです。

 携帯ショップ業界がオワコンであるにもかかわらず残存者利益が大きい理由は、高齢者中心に携帯ショップに頼らなければならない消費者がかなりの規模で存在することです。そしてこのことはノジマの家電事業にも、今回買収したVAIOの法人事業にも共通します。

 今、世の中の消費者は情報強者と情報弱者に二分されつつあります。わたしは経済評論家という仕事柄、がんばって情報強者の立場をキープできるように日々鍛錬していますが、はっきりいえばそれは結構つらいものです。何か買い物をする際には、できれば信頼できる専門家に相談して気楽に取引をしたいと本音では思っています。

 家電量販店のノジマは規模こそヤマダ電機やビックカメラグループに及びませんが、そのようなニーズに合わせて相談できる販売員を揃えることで成功してきました。

 実は大手量販店の中では異例な形で、ノジマの販売員の中にはこっそりメーカーから派遣された販売員が混じっていないのです。その分、情弱な消費者でも安心してどのメーカーの商品を買えばいいかを相談できるというわけです。