人事パーソンとしての悩みや課題が浮き彫りに

 広瀬さんの司会進行のもと、読書会が定刻どおりにスタートした。参加者は、会場が30名、オンラインが25名。ほとんど全員が人事関連の仕事に就いているようで、若手からベテランまで、幅広い世代が集まっている。

 最初に、人事図書館の吉田洋介館長が登壇し、「人事の方たちにぜひ読んでほしいという思いで、この本を(人事図書館に)置いたところ、多くの人に読まれています」と、書籍の好評ぶりを明かした。続いて、田中先生、中原先生、長谷波さんが順に挨拶。「この本をきっかけに、人事の皆さんが対話できることを楽しみにしています」(田中先生)、「今回の書籍は、ぜひとも世の中に送り出したい一冊でした」(中原先生)、「1500名以上の人事パーソンに協力していただき、よい本になったと思います」(長谷波さん)と、書籍についての強い思いを述べた。

 読書会の最初のプログラムは、応募時に参加者が回答した事前アンケートの結果発表だった。

 1つ目のアンケートは、「あなたにとって『人事』の仕事を『漢字一文字』で表現すると?」というもの。さまざまな漢字があがるなかで、最も回答の多かったのが「愛」、他には「志」「心」などもあり、人事パーソンたちの仕事に対する真摯な姿勢が反映されていた。そうしたなか、「泥」という文字が気になった田中先生は、「実際の人事の仕事はキラキラではなく、泥臭いという意味かもしれない。リアルな一文字だなと思いました」と語り、それを受けて、中原先生も、「理想を信じていないと誰もついてこない。『人事が理想を語らなくて誰が語るの?』とも、私は思います」と続けた。

 2つ目のアンケート結果は、「人事パーソンとしての悩み・課題」について。「仕事」「学び」「キャリア」の3つのテーマ別に回答が紹介された。回答中の「中長期」というワードに目をとめた田中先生は、HR領域にはトレンドワードが多いことを指摘し、トレンドワードを追いかけるよりも、自社に適した知識を得ることが大切ではないか?と語った。確かに、多くのトレンドワードを業務に反映させようとすると、学びの範囲が広がり過ぎて、進むべき方向性を見失ってしまうかもしれない。流行に無理に追いつこうとせず、自社にとって本当に必要なものを見極めることが、多忙な人事部の業務軽減につながるのでないか、と私は思った。

 広瀬さんから著者への質問――「今日、参加者の皆さんには何を持ち帰ってほしいですか?」には、“語り合うことから生まれる学びとつながり”と、3人が口をそろえて言い、グループトークで、その、“語り合い”が始まった。