自身の失政を棚に上げて
表層の現象を問題視する政府

 中国共産党と中国政府が毎年初めに発表する「1号文書」でも、2023年にはこんな表現があった。

「高額な彩礼や冠婚葬祭を派手に行うことなど重点領域の問題をとくに管理する」。

書影『中国共産党vsフェミニズム』(筑摩書房)『中国共産党vsフェミニズム』(筑摩書房)
中澤 穣 著

 1号文書のテーマは2004年以来、20年連続で三農(農業、農村、農民)問題であり、共産党政権が食料確保を重視していることが伝わる。

 1号文書での彩礼への言及は過去にもあったが、2021年からは3年連続となる。また2023年の1号文書には前年に続いて「農村の婦女児童の権利を侵害する違法犯罪行為を厳しく取り締まる」という表現もあった。彩礼と人身売買が同一線上で取り上げられているといえる。

 共産党政権は、彩礼高額化の対策として規制や宣伝工作の強化を重視する。しかし、高額化の原因は、男女間の人口の不均衡や、農村での貧弱な社会保障、女性側が不利となる離婚時の条件など多岐にわたる。

 共産党政権は、現代化した社会における女性側のニーズをうまく拾い上げているとはいえない。彩礼の高額化についても残念ながら同様の構図となっている。