彩礼の多寡は女性の親のメンツにもかかわるという事情もある。女性側の家庭がほかの家庭が受け取った額と比較して「うちの娘はなぜこんなに少ないのか」と高額な彩礼を求めるケースが少なくないという。女性の父親が金額にこだわって話がこじれたものの、最終的には女性の母親などがなだめて話がまとまるというパターンはよく聞く。
以上がおおむね李研究員の研究に沿った彩礼高額化の理由だが、分析から抜けているのは、農村のみならず、上海や北京など大都市でもかなりの比率で彩礼が支払われていることの理由だ。
彩礼はすでに「田舎の因習」ではない。この点について、最近結婚したという先の女性(北京在住)は「わたしの結婚でもやっぱりもめた」と笑い、高額化の別の要因として、離婚時の条件が女性側に不利だと認識されていることを指摘した。
中国の離婚率は日本よりも高く、2020年は53%に達した(ただし、離婚手続きのハードルが上がった2021年には離婚件数が大幅に下がった)。
一方で、離婚時には家事などの家庭内労働は十分に考慮されず、財産分与が女性側に不利と指摘される。そうしたなかで「彩礼は将来の離婚に備えた資金」(同女性)という性格も帯びてきているという。