「経営者がじつはうんざりしている言葉があります」
そう語るのは、ベンチャー・スタートアップに特化した転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さん。自身も1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の実績を持つヘッドハンターであり、活躍する人の特徴を「現場」「経営者」の両方の目線で知り尽くしています。
その高野さんがベンチャー流の「なにがあっても結果を出す働き方」をまとめたのが、書籍『ベンチャーの作法』です。圧倒的に活躍する人に共通する「5つの行動原則」を紹介。“きれいごと”抜きの仕事論に、「こんな本がほしかった」と話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「結果を出す人の考え方」をお伝えします。

経営者が「心の中でうんざり」している社員の言葉・ワースト1Photo: Adobe Stock

「やれ」とは言えない時代

「私は残業をしません。絶対に定時で帰ります」

 こう宣言する人がいます。
 もちろん仕事は人生の一部でしかなく、プライベートも大切です。
 むやみに残業してまで長く働く必要はないでしょう。
 しかし結果を出せるのは、ときに自分に厳しくなれる人です。

 仕事には、多少の無理をしてでもやらなければならない勝負どころがあります。
 そんなときにも「残業はしない主義なので」「このあと、予定があるので」と主張すれば、上司や経営者はなんと言うでしょうか。

 ……おそらく、何も言いません。
 それくらい今は、「やれ」とは言えない時代なのです。
 働き方改革、コンプライアンスの遵守、そういった縛りが多数存在します。
 ベンチャーでさえ、かつてほどの無理は強要されなくなりました。

言葉にできない「上司の本音」

 ただ、上司や経営者は何も言いませんが、心の中ではこう思っています。

「定時なのはわかるけど、今が大事なときだとわからないのかな」
「仕事に対して責任感ややる気がないな」
「次の重要な仕事は、別の人に頼むようにしよう」

 これが綺麗事を抜きにした感情です。

結果を出すには、ときに無理は必要

「そんなことを言われても、法律で定められているのだから別にいいでしょ」
「プライベートを犠牲にしろと言うんですか?」

 そんな反論は、ごもっともです。
 そう思うのであれば、それでいいと思います。
 強制してまで意識を変えてもらおうとは思いません。

 ですが、ただの事実として伝えさせてください。
 結果を出すためには、ときに多少の無理が必要になることもあります。
 こんな時代だから、誰も言わないだけです。

 たとえば大口の取引については、プライベートも含めて付き合うことで契約を解除させない努力も必要になってきます。大手企業相手のビジネスをやっているベンチャーで、休日にゴルフ接待をしているところは普通にあります。

 ベンチャーがそんな古臭いことをしているイメージが湧かないという人もいるでしょう。
 でも、たとえ時代遅れだとしても、それで結果が出るのなら、やるんです。
 何をしてでも結果を出す、まさにベンチャースピリットです。

(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

高野秀敏(たかの・ひでとし)
株式会社キープレイヤーズ代表取締役。東北大学特任教授(客員)。文部科学省アントレプレナーシップ推進大使
これまでに1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援をおこなってきたヘッドハンターかつ経営者。とくにベンチャー・スタートアップへの転職支援に特化している。エンジェル投資家、顧問、社外役員としても活動しており、関わる企業は173社。識学など投資先企業8社と、創業から役員として関わったクラウドワークス、メドレーの2社が上場している。新卒ではインテリジェンスに入社。上場時のメンバーとして、ベンチャーから大企業への変化を身をもって体験した。自身も圧倒的な結果を出し、その後に独立。