米半導体大手 エヌビディア が20日に予定している注目の8-10月期(第3四半期)決算発表は、人工知能(AI)ブーム再燃のきっかけになるだろうか。
投資家はエヌビディアの株価が決算発表後に快走すると見込んでポジションを仕込んでいる。オプション市場で目に付くのは、株価が今週10%超上昇すれば利益が出るポジションの増加だ。
エヌビディアは最近、上場企業の時価総額で世界首位の座を取り戻した。株価は昨年3倍以上に伸び、今年は年初からさらに2倍以上になった。米オープンAIの「チャットGPT」の基盤となる生成AIなど、AIシステムの構築にエヌビディアの画像処理半導体(GPU)が不可欠であることが株価を押し上げる要因となっている。
エヌビディアの決算発表日はいまや、市場全体に及ぼす影響という点で米連邦準備制度理事会(FRB)の会合や主要経済指標の発表に匹敵するウォール街の一大イベントになった。「Nvidia Day(エヌビディアの日)」に関連してネット上のミーム(はやりネタ)が拡散したり、ウオッチパーティーが開かれたり、株価が次にどう動くかをにらんでリスクの高い大規模な取引が行われたりするようになった。
今年上半期はAIを巡る投資家の熱狂が株式市場全体を押し上げた。ただ、その後投資家の間で大手テクノロジー企業による巨額のAI投資に対する懸念が広がると、熱狂の一部は冷め始めた。
シカゴ・オプション取引所(CBOE)を運営するCboeグローバル・マーケッツのデータによると、足元ではエヌビディアの株価が155~162.50ドルに上昇することを見込んだ「コールオプション(買う権利)」の取引が増えている。エヌビディアの15日の終値は141.98ドルだった。
米宅配・航空貨物大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)で荷積み作業員として働くオレゴン州のデーモン・グノジェックさん(34)は最近、エヌビディア株が177.50ドルに達した場合に利益が出るコールオプションを購入した。
グノジェックさんは米電気自動車(EV)大手テスラが2019年にサイバートラックを発表した後に株式取引を始めたと話す。その後オプション取引も始めた。エヌビディアを注視するようになったきっかけは、オラクルの共同創業者ラリー・エリソン氏とテスラのイーロン・マスクCEOが夕食の席でエヌビディアのジェンスン・フアンCEOに対し、GPUをもっと供給するよう頼み込んだとのエピソードをエリソン氏が披露したことだった。
「エヌビディアを特に気に入っているわけではない」とグノジェックさんは話す。「いずれにせよ、大企業で数字に責任を持つ権限の強い人たちがジェンスンを口説こうとしている」
グノジェックさんによると、エヌビディア株は上昇し続けるための条件が整っている。「金利が低下することは誰もが知っている」とし、リスクを積極的に取る時が来たとみている。